歌手の宇多田ヒカルさんがノンバイナリーを公表しました。それはどのような意味か。またネット上の反応を紹介します。それから宇多田さんの恋愛対象につても考察します。
ノンバイナリーを公表
2021年6月26日、自身がノンバイナリーであることをインスタライブ(@kuma_power)で発言しました。
当日、2021年3月に公開されたアニメーション映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の総監督を務めた庵野秀明さんをゲストに迎え対談。
その対談の前に、宇多田さんは自身の背景に映るクマのぬいぐるみを指し「別のスペシャルゲストであり、わたしの親友を紹介します。名前はクマちゃん。彼は男の子でゲイなんです」と英語で話し始めました。クマは20年来、大のお気に入りのテディベアのことです。
そして、「私はノンバイナリー。ハッピープライドマンス」とさらっと言っています。カミングアウトというほど重い雰囲気ではなく。
ある専門家は「自分は自分であり、男や女などの価値観では生きていないと発言しただけだ」と性的指向のカミングアウトと混同しない考えを示しています。例えば、小学生が背負うランドセルの色は、男の子が黒、女の子が赤という考えが、今は自由な色を選べるようになった感覚に近いとされます。
宇多田さん自身も自分がノンバイナリーであることを最近知ったのだそうです。宇多田さんは、アメリカ・ニューヨークで生まれ、現在、日本とアメリカの二重国籍を維持していると言われています。それからイギリス・ロンドンに在住しています。ジェンダー(社会的意味合いから見た、男女の性区別)という言葉は1950年代ごろからアメリカで広まり、日本においては1990年代に認知されました。このことから宇多田さんはジェンダーについての情報をキャッチしやすい環境にいるといえるでしょう。
ノンバイナリーとは
「ノンバイナリー」「プライドマンス」という言葉は最近耳にするようになりました。その意味を説明します。
ノンバイナリーとは、身体的に関係なく自身の性を男性と女性の2つに当てはめないことや当てはめたくない人のことです。逆に、その2つに分けることを「ジェンダーバイナリー」と言います。
宇多田さん以外にも、日本の有名人ではタレントの井手上漠(いでがみばく)さんも、どの性を好きになるかについて多くは語っていませんが自身を男性女性という性別に区別せず自分らしさを大切にしています。外国人では、イギリスのシンガーソングライターのサム・スミスさん、アメリカ人の俳優のデミ・ロヴァートさんなどがいます。
それから、「プライド月間(Pride Month)」とは、毎年6月にアメリカをはじめ日本を含む世界各国でLGBTQ+の権利を啓発する活動やイベントが実施される時期になります。これは1969年6月28日、アメリカ・ニューヨークにあるゲイバー『ストーンウォール・イン』でセクシャルマイノリティ当事者らが初めて警察官に立ち向かい暴動となった事件が発症となります。
ちなみにLGBTQ+は性的指向や性自認を意味する英語の頭文字を撮って作られた言葉です。
- Lesbian(レズビアン):同性を恋愛の対象とする女性
- Gay(ゲイ):同性を恋愛の対象とする男性
- Bisexual(バイセクシュアル):同性も異性も恋愛対象となりうる人
- Transgender(トランスジェンダー):体の性と心の性が異なる人
- Questioning(クエスチョニング)またはQueer(クイア):性的指向や性自認が定まっていない人
最後の「+」はその他を示します。
似たような表現として「LGBTQIA」があり、「I」「A」は次の意味になります。
- Intersex(インターセックス):生まれつき生殖系の構造に異変がある、もしくは男性または女性を特定する染色体パターンが一般的なものと一致していない人
- Asexuality(アセクシュアル):無性愛者とも呼ばれ異性と同性に対して恋愛感情を抱かない人
ネット上の反応「でしょうねぇ……」
この宇多田さんの発言に対してネット上では次のような反応が見られました。
「宇多田ヒカルのノンバイナリー宣言、『ああ、でしょうねぇ……』という感想しか浮かばなかったです」
「前から『この人中身オッサンやんけ』って思ってたので知ってた感」
このように、宇多田さんの言動を知る人はすでにそれらしいことを知っていて再認識させられたようです。このように言われるのには宇多田さんの過去のエピソードからわかります。例えば次のこと。
- 子供時代、アメリカの学校で尊敬する人の問いに「フレディマーキュリ―」と答え、担任教師が「でも彼はゲイでしょ」と言い、「ゲイで歌が上手くて何が悪い」と切れ、当時からジェンダーに対する意識がありました。
- デビュー当時から楽曲の特徴は男性目線の歌詞が多くありました。一人称「ボク」を主語にした曲が該当。ちなみに、その後、AKB48グループのプロデューサーなどで知られる秋元康さんが作詞を真似しだしたと言われます。
- 2020年1月3日放送のテレビ番組『マツコの知らない世界SP』にゲスト出演した宇多田さんは、自分だけが感じる喜びというような話題で「地味だけど、なんか可愛らしい女の子を見つけたみたいな」とこちらも男性目線とも取れる例を出していました。
過去にノンバイナリーをほのめかす投稿も
上のインスタライブが行われる前の同18日、宇多田さんはジェンダー問題を取り上げ、自身がノンバイナリーをほのめかす投稿をしていました。
「日常生活でミスかミセスかと聞かれたり、ミス、ミセス、ミズから選んだりするのはうんざりです。結婚歴や性別をはっきりと区別されるのは違和感があります。性別や社会的地位を問わず誰だも使用できる敬称があってほしいです」と英語で投稿しました。
続けて「調べてみるとミックス(Mx)がありました。これは素晴らしくもっと広く使われることを願っています。私も性別を特定しない敬称を思いついたけど一足遅かったです」と綴り「Mys. Utada (“mystery” Utada)」と書いたメモの写真を投稿。
フォローワーさんからは次のように共感するコメントが多く見られました。
「日本語の『〇〇san』を世界に広めようw」
「こんな時”様”は便利」
「MxよりMysteryが好き」
「私も迷います。離婚したら、未婚なのか既婚なのかどちらからしか自分の選択肢が選べない時(^^;;」
「Mystery Utada sounds cool」
恋愛対象の性別
宇多田さんはノンバイナリーであるわけですが、恋愛対象の性別に関しては男性を好むと言えるでしょう。
それは、2002年から2007年までカメラマン・映画監督の紀里谷和明(きりや・かずあき)さんと結婚していたこと。それから、2014年から2018年までイタリア人の一般男性と再婚していたこと。2015年に第1子となる男児を出産していること。
このことから宇多田さんは恋愛対象は男性と考えられます。
今回、宇多田さんのノンバイナリーであることの発言により、ジェンダーに対する偏見の軽減やこういう性質の人もいるんだという多様性が世間に多くなると良いですね。
コメント